海上コンテナでの船積みは危険がいっぱい・・・。


こんにちは、通関士の村田 博史です。


昨日は海上コンテナをご紹介しましたが

海上コンテナを本船に積み込んで海外へ輸出するには

色んな情報を船会社へ通知しなければなりません。


今年、SOLAS条約改正に伴う輸出コンテナ総重量証明が義務付けられました。

SOLAS条約とは・・・海上における人命の安全のための国際条約です。


SOLAS条約改正は国土交通省のホームページで公表されています。

コンテナの総重量を確定する必要があるのはなぜ??

海上における人命の安全のためってどういうこと??


それは、輸出者様が報告した重量と実際に海上コンテナに詰めこんだ貨物の重量に

差異が生じないようにして、本船が洋上で沈没するのを防止するのが目的のようです。

海上コンテナを1万本積載できるメガ本船もありますので、それぞれ海上コンテナの

実際の重量が1トンづつ違っていると1万トンも違うことになりますよね。

仮に1万トン違ってくると大変なことになります。


それで、本船に積み込みする前に重量を確定することを義務付けるように

国際条約の規則として定められました。

よって、貨物の荷送人が責任をもって貨物の重量を確定させる必要があるのです。


さらには

 先日、海上保険のセミナーに参加した際に話題になった事件があります。

荷送人が船会社へ海上コンテナに詰め込んだ貨物が危険品であることを申請せずに

神戸港からロッテルダムに向けて出港した本船が地中海を航行中に船倉内において

高熱の発生及び発煙を伴う事故が発生しました。

これに対応するため船倉内への散水、注水、海水の貯留等の措置がとられた結果、

コンテナ船の船体や積荷に破損や水濡れといった損害が発生した事例です。


この事件は船会社と荷送人とのあいだで裁判になったようです。

貨物が危険物であったにもかかわらず、荷送人が危険物である旨の表示義務等の注意義務を

怠った結果、同貨物が積載されたコンテナが船倉内の熱源に近い場所に積み付けられたために、

発熱反応を起こして事故に至ったものとして、

不法行為による

損害賠償請求権に基づいて、損害賠償の支払を求めた訴訟が起きたのです。




危険物の安全輸送を確保するため、国連は勧告として危険物リストを定めています。

危険物を9種のクラスに分類し、クラスごとに輸送方法や梱包方法が定められています。

「国連分類による危険物クラス(Hazard Class)」はUN番号があり、そのUN番号で

どのような危険物かを確認することが出来ます。

危険物の運送で使用すべき品名・国連番号(UN番号)、危険品クラス毎に表示すべきラベル、

輸送用容器(包装・梱包方法)に関する要件が取り決められています。 


詳しくは日本貿易振興会(ジェトロ)のホームページで確認が出来ます。


現在、問い合わせが多くなっていて気を付ける必要があるのは

「リチウムイオン電池」の取り扱いについてです。

最近だと山手線の電車内で充電器から白煙があがったり、あるメーカーの携帯電話が発火した事件も「リチウムイオン電池」が原因で起きています。

「リチウムイオン電池」はUN番号 3480 及び 3481(装置に組み込まれたもの)に該当し、

危険品扱いとなりますのでご注意ください。



また、スプレー缶の商品(制汗剤・育毛剤・潤滑剤など)は

エアゾール製品 UN番号1950に該当し、危険物となりますので

必ず危険品の申請を船会社へ行う必要があります。

皆さんが海外へ旅行する際も航空機内に持ち込みするのを禁止されていますよね。


危険物の申請を怠って万が一、船積みした本船が海上で事故が起きた時に

荷送人はとんでもないこと(損害賠償の訴求)になりますので

必ず危険品がある旨を通知してください。


危険品に該当するかを確認するには製造メーカーよりMSDS(安全データーシート)を取り寄せて

船会社もしくは通関業者へ相談してください。

MSDS(安全データーシート)で危険品に該当するかを判断しています。

2012年4月 よりMSDSではなく、SDSと略称が統一されましたが

ワタシはMSDSのほうが馴染みが深いので今でもMSDSと呼んでます。


SDS制度は経済産業省のホームページで確認が出来ます。



実は先程紹介しました神戸港からロッテルダムに向けて出港した本船の火災事故は

メーカーから提出されたMSDS(安全データーシート)の記載内容に誤りがあったことで

不法行為にはならないと荷送人が裁判で争ったようです。


この事件は平成25年2月に判決が出されています。

どのような判決が下りたのかを知りたい方は

「コンテナ船火災と失火責任法」で検索してみてください。




それでは、また



アンジュ観察記

白ペキニーズのアンジュです。 通関のお仕事を中心にワタシの身の回りに起きたことをお知らせしますね。 通関業者ムラロジのキャラクターになれるように頑張りますので応援してください。

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